新型コロナ:半デミック(hemidemic), NOT 汎デミック(pandemic)? Vol.3

新型コロナ:半デミック(hemidemic), NOT 汎デミック(pandemic)?

はじめに:

新型・冠ウィルスを社会や世界共同体が広く認知してから11か月以上、ザっと一年経ちました。いまは1月中旬。始まりの月です(太陽暦では)。昨年の振返りが有意義とされる時期です。今のところ判明している事実。そこから個人的合理的に推論できたコトや仮説を整理したいと思います。

なお、小論の指針については文末に譲りますi

 

1)事実1:感染者数(単位人口当たり)の 格差

 グラフ①「新型・冠(コロナ)ウィルス感染者数(累計)」

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グラフ①「新型・冠(コロナ)ウィルス感染者数(累計)」

 グラフ①は「コロナ()ウィルスiiの感染者数(累計)iii」。

「世界、アジア、アフリカ、オセアニア、北米、南米、EU、ロシア、日本、韓国」。「人口百万人あたり」に換算。期間は「2020.02.01から2021.01.07まで」。

 

一目瞭然ですが、同じ人口に換算して比べると、感染者の数ないし比率が違います。それもかなり。

いわずもがなを一つ。生の数字を単位当たり――この場合は人口――に換算することは大事です。というより初歩中の初歩です。例えば日本国内で心疾患の患者数を、人口が集中している首都圏・京阪神などと人口過疎地域で単純比較してはいけないのはわかりやすい。「単位当たり」という考え方は2010年代でも小学校5年ぐらいで習うことです。大人にとっては常識でしょう。

 

こういう基本的な加工で国際比較すると(但し2021.01.07までの集計)

世界平均の累計感染者数は、百万人当たり約11,000人。

 

北米は同41,000人ほど。EU、同35,000人超。南米、同31,000人ほど。

アジア全体では同5,000人未満。

アフリカ、日本、韓国は、同2,0002,500人。オセアニア1,000人未満。

くどいようですが「百万人当たり」。日本のナマの感染者数の累計は、2,500×125(=総人口:12500万/100万)になります。

 

北米は、世界平均の約3.5倍。EUも約3倍。南米も3倍弱。

日本などアジアは、世界平均の1/41/3にとどまります。

北米やEUは、オセアニアやアフリカ、アジアと比べるとザっと 1030倍の被害です。

 

パンデミックとはいえ少々の乖離はあって当然でしょう。時間差もありうる。

しかし、(推定)震源地に近い日本や韓国、広くアジアで、北米に遅れ感染拡大があると考えるのは無理がある。むしろ、先行するハズ。

ナゼこれらの地域、特に統計がまずは信頼できる韓国や日本で感染者数がこうも少ないのか? 不思議ではないでしょうか? 少なくともわたくしは不思議です。

 

もちろん!

あくまで「確認された」感染者数です。

 

日本のように(?)先進国であっても、PCR検査が必ずしも充実しているとはいえない国もありますiv

すなわち、検査という網を財政が許す限り広げていて、かつ、正直に申告している国。どちらかそうでない国。それらを単純比較してはいけない。

 

そんなことをすれば第一次大戦の「スペイン・インフルv」の、スペイン由来呼ばわりの過ちの二の舞です。中立国スペインはインフルに感染した王族の容態含め、正直に報道したので悪名高い名前がついたのは有名です。今ではただの印象論というのが通説ですvi

 

こんな印象論を含め、一見もっともでも実は怪しい議論を見破るのは、民主体制の市民・有権者の責務です。義務教育で授かった知識は、そのためにこそ役に立ちますvii

 

日本の下方への乖離については、すぐに思い浮かぶ(だろう)仮説は、

(1) (アルコールなどを含む)手洗い、少なくとも綺麗な真水があること。

(2) マスクの習慣(花粉症の思わぬ恩恵)。

(3) キスハグ文化のないこと。 などでしょうか。

 

しかしそれを補ってあまりある、不利な条件ないし事実がたくさんあります。

(1) 世界一の高齢化社会を抱えている。感染症に脆弱な年齢層の比率が、世界一高い。

(2) 世界トップ級の人口密度。つまり、「国として『密』」。

(3) 震源地とされる中国本土から地理的に近く、昨年まで数年間、旅行客や買い物客が大量に来訪していた。

――まず、この三つの不利な条件・事実を疑えるならどうか疑っていただきたい。そしてそれらの危険がどう回避されたか、ご教示してください。比較的無理なく疑えるとしたら1つだけ。震源地は中国ではなく(実は)遙か遠くの国というくらいでしょう。

またマスメディアをにぎわせている通り、

(4)中央政府・地方政府は決して無策ではなかったにせよ、説明不足がなによりも祟り、不満やチグハグ感または両方が残るような施策しか講じていない。

(5)海外の国家独占の、ホントウの暴力つまり武器を携行した警察などを駆使した厳しい措置に比べたら、甘々な「自粛」。ボランティア的な営業時間短縮。その「要請」。

(経済的に)安心して休めない、(健康面や風評で)安心して営業もできない。

情報強者が、インフォームつまり十分な説明もせず情報も与えずに、庶民にそんな選択を強いてどうしろと?

 

つまり、好条件と悪条件だけを並べたら「ああいえばこういう」の水掛け論。しかし現に、直接的な健康被害に限れば、世界有数の低さです。

北東アジアについていうなら、台湾は別格ですが、ITによる監視を成功裏に利用しているとされる韓国と目立った差がない。

この事実は、その手の監視が不要。または、日本のナニカが韓国と共通。または両方。そんな示唆をしています。

 

日本の状況は、昨年を通じて世界から不思議に思われています。

証拠(1)たとえばある専門誌viiiは、20205月号で初めて新型・冠(コロナ)ウィルスの特集を載せています。その最初の特集論文の一本は、日本の感染者の相対的な少なさの謎についてのものでした。

証拠(2)また昨年初夏の、日本の財務大臣への非礼な問いかけもありました:

趣旨を損なわずに戯画化して言い換えると、

「被害が少ないの、日本がワクチンを持ってるからだろ? ガメてねーでウチの国にも分けてくれよ」

民度の違いだよ(バカヤロー)

 

悪魔で戯画的な表現です。

しかし先方の問いかけはやはり「非礼」ですよね?

少なくとも財務大臣の振り返りによる限り、日本がワクチンや特効薬などを昨年7月時点で持っていて、自国民のためだけに使い、貯め込んでいるという前提、意味合いを必然とする問いです。しかも複数から(らしい)。

日本がそんなアコギな自国利益第一主義であると見なすのは、非礼でしょう。

その返し:「民度の違い」……その当否と適否はさておき。

 

少なくとも日本の状況は、当時も今も桁違いに苦しむ海外諸国から不思議の眼で見られており、現状流布している説明では、説明がつかない。

 

財務大臣に非礼な質問をぶつけた海外の当局者は、内外の感染や死者情報を必死に集める中、日本というとんでもない悪条件を跳ね返している(ようにみえる)国を知った。

いろいろ検討しワクチンじゃないかと思い「持ってるんだろ?」と聞いてしまった……のかもしれない。その裏の意味合い、非礼をつい忘れるほど必死だった。それなら同情の余地が生まれます。

民主制・君主制を問わず、まっとうで独立した国家なら国民やその支持を維持したい。だから政治家や君主は頑張る(ハズ)

 

実際当時(も今も)北米やEUや南米は桁違いに切羽詰まっている。

昨年と変わりありません。

 

 

 

i1)疫学の分析手法は、計量経済学や統計と極めて近く、医学の門外漢のわたくしでも発言する余地があります。

2)唯一最大の媒介者である人をウィルスそのものと同程度の比重で考える。

3)確認できかつ信頼できそうなデータをなるべく虚心に見る(「100%虚心」はあり得ないが)。

4)仮説をあれこれ思い浮かべる。または否定する。汎用性のある仮説も地域特有の仮説も。

5)次に、因果的妥当性の検証または反証、もしくは確定の不可能性の確認に移る。ふるいにかけられ残った有効そうな仮説は、実験が難しいこともあり、統計の数値的検証かそれ並みに、説得力や納得感がないといけない。

6)とにかくともかく「後知恵のトラップ」 にハマらないよう気をつける。

7)必要なら一次的前提や普段はあまりに当然視している「大前提」を疑う、わずかな勇気をもて。

 

iiウィルスはRNAだけで己れを宿主細胞に複製させる。DNAの螺旋状の塩基対による制御を伴いつつ複製する人などの動物とは異なります。(二重螺旋の対がないので)人と違い、多少の突然変異はウィルスには日常茶飯事。いわばウィルスの多様性確保の戦略です。有性生殖を多様性確保の核とするようになった人類などと同列視しない方がいい。

 

iiiなお「確認感染者数」は、「PCR検査などで(少々の変異はあれ)RNAの型が一致するウィルスが検出されたことを確認できた感染者」を指すのでしょう。

 

ivとはいえ、そもそもPCR検査は抗体検査と異なり、たった数日、数時間後で(例、検査を受診した医療機関の帰り道で罹患)意味を失いかねない。重きを置くのは、控え目にいって合理的とはいえません。

 

v諸外国と感染症史上は「スペイン・インフルエンザ」が正しい。日本の国立感染症研究所もそう呼んでいます。なのに日本ではいまだに一般にまたは大手マスコミでも「~風邪」と呼ぶ。現代の素人レベルの知識でもかなり誤解を招く名称を改めないのはフシギです。

 

vi想像もつかない目的や陰謀で、被害が自国や世界で深刻だという印象を与えたい国などがいる可能性も皆無ではないかもしれない。しかしわたくしはそういう陰謀論は好みません。

 

vii「国内感染ゼロ」を標榜する最優等生の台湾でも、少なくとも12月には、国内の病院に感染認定されて隔離されている人が何人もいます。感染者は近隣の諸国から輸入している単純労働者に到着後、陽性反応が出たためです。しかし彼/彼女らは外国人。なので「国内感染」扱いされない。統計区分の妙技というか、台湾国内で感染したのではないならば嘘ではない。しかし出国時に陰性だった人もいるならば、偽陰性の可能性かもしれません。いったいどこで感染したのか? 疑う余地はなくはないでしょう。

 

viii EMBOMay, 2020号。